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膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)

更新日時:2017年7月25日

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)とは

IPMNの概要

 膵臓には嚢胞性腫瘍とよばれる病気がありますが、このうち最も頻度が多く、代表的なものが、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)です。嚢胞とはそもそも内部に液体を貯めた袋状のものを指します。袋の内面が腫瘍性細胞で被われている場合は嚢胞性腫瘍と呼び、多くの場合、内容液はネバネバとした粘液です。このような嚢胞性腫瘍は要注意です。なぜならば、この腫瘍性細胞ががん化することがあるからです。

 

IPMNの診断

 非常にゆっくりと進行するため、ほとんどの場合、症状はありません。ただし、粘液によって膵液の流出が妨げられたり、病変が大きくなったりすれば、腹痛や背部痛を自覚することがあります。また、膵炎や糖尿病を併発することもあります。さらに、がん化すれば膵臓がんと同様の症状が出現します。血液検査では膵臓の酵素であるアミラーゼが高値を示すことがあります。また腫瘍マーカーであるCA19-9やCEAの上昇はがん化を診断する上での一助となります。最近では検診の超音波検査、あるいはCTやMRで偶然に発見される機会が増えていますが、良悪性の区別には、超音波内視鏡検査(EUS)や内視鏡的逆行性膵胆管造影 (ERCP)、および膵液細胞診検査などの精密検査が有用です。

 

IPMNの種類

 IPMNは大きく分けて3つのタイプがあります。膵臓の中には膵液を集めて十二指腸まで誘導する膵管という細い管があります。膵管の枝に発生するタイプを分枝型IPMNと呼びます。時に嚢胞が多数重なり合って、あたかも葡萄の房状に見えることがあります(図1a)。一方、膵管本幹(主膵管という)から発生するものを主膵管型IPMNと呼びます。この場合、主膵管の内側の腫瘍性細胞から産生された粘液により膵液の流れが悪くなり、主膵管が全長にわたって、太くなるのが特徴です(図1b)。IPMNは一か所だけでなく、膵臓のいたるところに発生することがあるので、分枝型と主膵管型が併存した、混合型IPMNというものもあります(図1c)。

【図1a】

【図1b】

【図1c】:混合型IPMNのMR像

IPMNの進行度

 IPMNには膵がんで使われているようなステージ分類は有りません。ただし、良性から悪性(すなわち、膵がん)まで色々な段階があり、ゆっくり進行すると言われています。従って、できれば進行がんになる前に治療することが重要です。これまで、世界中で多くの医師がデータを解析した結果、 IPMNががんになっていることを疑わせる所見について、ある程度のコンセンサスが得られてきました。以下にその内容を簡単にご説明します。

1)分枝型IPMN:

 主膵管と交通する分枝が5mm以上に拡張している場合をいいます。悪性(=がん)の頻度は低く、悪性化の頻度も年率わずか2~3%といわれています。しかし、嚢胞の大きさが3cm以上であったり、嚢胞の中に図1aに示すような腫瘍状の結節(隆起性病変)が見られたり、あるいは嚢胞壁が厚くなっているような場合は悪性の可能性が高いことが報告されています。また、嚢胞が短期間に急激に大きくなった場合も注意が必要です。

2)主膵管型IPMN:

 主膵管が5mm以上に拡張している場合をいいます。分枝型IPMNと異なり、悪性(=がん)の頻度が高いため注意が必要です。とくに、主膵管の太さが10mm以上の場合はハイリスク群と考えられ、全例で外科手術が勧められています。図1bの様に主膵管内部に腫瘍状の結節(隆起性病変)が認められた場合には、がんの可能性がさらに高くなります。

3)混合型IPMN:

 分枝型IPMNと主膵管型IPMNに準じます。

 

 

IPMNの治療

IPMNの治療法

 IPMNの治療の基本は病変の完全切除です。明らかに進行がんになってしまった場合の治療法は通常の膵がんと同じですから、膵がんの項をご参照ください。最近では膵臓に対する腹腔鏡下手術のほとんどが保険適用となりました。ただし、一部の術式は適用外になりますので、詳細は担当医にお尋ねください。

1)膵尾側除術:

IPMNが膵体部あるいは膵尾部に限局している場合に行われます(図2a)。がんの疑いが少ない場合には、状況によって脾臓を残すことも可能です(図2b)。

【図2a】

【図2b】

 

2)膵中央切除術:

病変が膵体部に限局し、がんの可能性が少ない場合に選択されます。膵臓の中央部を小範囲だけ切除するため、膵臓の多くを温存することができるというメリットがあります(図2c)。その反面、尾側膵に対する再建術(図2d)が必要で、また膵離断面が2か所になるため術後膵液瘻(膵液が漏れ出し、重篤化することがある)の発生率が高まるといったデメリットもあります。

【図2c】

【図2d】

 

3)膵頭十二指腸切除術:

IPMNが膵頭部に存在する場合に選択されます。通常の膵がんの場合と同様の術式ですので、膵がんの項をご参照ください。

 

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