一般社団法人 日本肝胆膵外科学会

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急性膵炎と慢性膵炎

更新日時:2017年7月7日

急性膵炎とは

 急性膵炎とは、膵臓の急性炎症で、他の臓器にまで影響を及ぼし得るものです。急性膵炎の2大原因は、アルコールと胆石です。急性膵炎の最も多い症状は、上腹部痛ですが、背部まで痛みが広がることもあります。ほか、嘔吐、発熱などの症状や、状態が悪化すると、意識障害やショック状態など重症化することもあります。

 急性膵炎は、血液データと造影CTにより診断、さらには重症度判定が行われます。急性膵炎の治療は、絶飲食による膵臓の安静と、十分な量の輸液投与を行います。腹痛に関しては、鎮痛剤を適宜使用し、膵酵素の活性を抑える目的で蛋白分解酵素阻害薬も使用します。重症膵炎においては、集中治療が必要ですので、対応可能な部署や施設に、患者さんを転送し、輸液管理に加え、臓器不全対策、感染予防、栄養管理などが必要となります。

 急性期が過ぎると、しばしば膵仮性囊胞(膵液などの液体が入った袋状の貯留物)が発症したり、膵臓や膵臓周囲の組織が壊死化し、感染が生じることがあります。仮性囊胞は、感染や出血が生じた場合、囊胞の内容液を吸引するドレナージが必要です。また、感染した壊死組織は、壊死組織を除去するネクロセクトミーが必要です。近年、内視鏡的治療の向上により、両治療とも内視鏡的に行われることがほとんどですが、内視鏡的治療が困難あるいは難渋した場合は、外科的治療が必要なこともあります。

 

 

慢性膵炎とは

 

 慢性膵炎とは、膵臓の正常な細胞が壊れ、膵臓が線維に置き換わる病期です。慢性膵炎の原因は、男性では飲酒が最も多く、女性では原因不明の特発性が多くみられます。慢性膵炎では、膵液の通り道である膵管が細くなったり、膵管の中に膵石ができたりして、膵液の流れが悪くなり、痛みが生じると考えられています。慢性膵炎の初期段階では、膵臓の機能は保たれており(代償期)、腹痛が主な症状です。慢性膵炎が進行すると、次第に膵臓の機能が低下し(移行期)、さらに進行すると、膵臓の機能は著しく低下し(非代償期)、消化不良をともなう下痢や体重減少、糖尿病の発症や悪化が生じます。

 慢性膵炎の治療は、禁酒、禁煙を行い、腹痛に対しては鎮痛剤や蛋白分解酵素阻害薬を使用します。膵管が細くなっている場合は、内視鏡を用いて膵管を広げたり、膵石がある場合は、内視鏡による除去や体外衝撃波結石破砕術を併用することもあります。これらの治療を行っても、痛みが治まらない場合は、手術を行います。慢性膵炎に対する手術は、膵管ドレナージ手術と膵切除術に分けられます。膵管ドレナージ手術は、拡張した膵管を切開して腸管とつなぎ、膵液を腸管に流して膵管内の圧を下げる手術です(下図)。また、膵管の拡張がない場合は、膵管の狭窄が最も強い部位の膵切除術を行うこともあります。

     

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