日本肝胆膵外科学会高度技能専門医育成のための指導マニュアル
肝胆膵外科領域における高度な専門知識と技術を持つ肝胆膵外科高度技能専門医を養成するため、指導方法にも一定の標準化が必要求められる。そこで、肝胆膵外科診療の現場における指導の要点についてのマニュアルを提示する。
- 肝胆膵外科高難度手術を行うに当たって、肝胆膵外科高度技能専門医申請予定者が以下の項目について十分に経験していることを確認する。
1)肝胆膵手術における周術期管理
2)肝胆膵外科高難度手術の第一助手
3)肝胆膵外科診療に関するインフォームド・コンセントや生活指導
- 肝胆膵外科高難度手術に関する基本的技能である以下の項目を適切に指導する。
1)肝の切離
2)肝切離断面の処理
3)肝静脈の処理
4)肝門部における肝動脈・門脈・胆管またはグリソン鞘の処理(剥離操作、合併切除、再建術)
5)膵の切離
6)膵の上腸間膜動脈からの剥離
7)膵切離断端の処理
8)門脈または上腸間膜静脈合併切除・再建
9)膵消化管吻合
10)胆道消化管再建
11)肝十二指腸間膜における肝動脈・門脈・胆管の処理(剥離操作、合併切除、再建術)
12)リンパ節郭清・神経叢郭清
13)腹部ドレーンの設置
- 肝胆膵外科高難度手術に関する術中偶発症への対応も含めた高度技能について以下の項目を適切に指導する。
1)肝実質損傷への対応
2)肝動脈損傷への対応
3)肝静脈損傷への対応
4)門脈系静脈損傷への対応
5)胆管損傷への対応
6)膵の損傷への対応
- 肝胆膵外科手術の周術期管理について以下の項目を適切に指導する。
1)肝胆膵外科診療に必要な解剖や機能などの基礎的知識
2)肝胆膵外科診療に必要な検査や処置、合併症に関する知識と手技
3)化学療法、放射線療法、ウィルス性肝炎の内科治療
- 肝胆膵外科に関する学会発表および論文作成について以下の項目を適切に指導する。
1)学会発表および論文内容の意義
2)個人情報の保護、倫理的遵守事項
- 肝胆膵外科領域に関する医の倫理,態度,習慣について以下の項目を適切に指導する。
1)肝胆膵外科診療に特有な病態を踏まえた適切なインフォームド・コンセント
2)肝胆膵外科手術特有の術後の療養、生活指導、ターミナル・ケア
3)肝胆膵外科領域に関する文献や指導医の意見などの教育資源の活用
- 肝胆膵外科診療に関する生涯教育について以下の項目を適切に指導する。
1)施設内カンファレンスでの討論参加
2)根拠に基づいた診療(EBM)
3)最新の医学、医療事情を把握するための学術集会、教育集会への参加と学術出版物からの情報収集
- 肝胆膵外科診療に関する医療行政について以下の項目を適切に指導する。
1)医療行政に関する最新の知識
2)医療管理(リスクマネージメント、医療経営、チーム医療など)に関する最新の知識